持込厳禁の書

"Borges, Obras Resenas Y Traducciones Ineditas"という本は、いままで単行本化されていなかったボルヘスの短文を集めていて、その中にシュオブの翻訳が二篇入っている。(『架空の伝記』所収の「セプティマ」と「バーク・ヘアー両氏」) こんな断簡零墨まで刊行されてしまうのだから、まことにボルヘスマニアの執念は恐ろしい。
 
そんな断簡のひとつで、決して日本に入ってこない本についてボルヘスは語っていた。十八世紀に刊行されたある書が述べるには、おびただしい書物が有史以来唐土から日本に移入せられたものの、ただ一冊だけ固く持込を禁じられた本があるという。

その本がいったん入ってきたら最後、あれほどの繁栄を誇った大和の国はあとかたもなく滅びてしまうのだそうだ。まことにかの「ネクロノミコン」にも匹敵すべき禁断の書ではないか。

その本の名は? 『ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件』にちらりと言及されているそうだが真偽は定かではない。