- 作者: ジョン・フランクリンバーディン,John Franklin Bardin,浅羽莢子
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 1999/10
- メディア: 単行本
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風邪をひいてしまって二三日前から咳が止まらずテラクルシス。こういう朦朧とした頭のときにはバーディンなどいいのではなかろうかという気がして、ずっと積読だったのを手にとってみた。
まず「悪魔に食われろ青尾蠅」。ヒロインは精神病院から退院したばかりのエレン。現実とも妄想ともつかぬ物語が彼女の単独視点で語られている。相当計算されているのではないかという気がする構成がウマーである。それからハープシコードの鍵とか、少々フロイト的な臭みはあるものの小ネタも魅力的だ。あと彼女を誘惑したギター弾きが、夢の論理に従って反復して殺されるところとか。
意想外というも愚かな素晴らしい結末には、不覚にも少々感動してしまった。このネタ自体は今では手垢にまみれているのものだが、本書が凡百の同種ネタ小説と異なるのは、全然つじつまがあってないにもかかわらず、なぜか読者を納得させる理外の理としての必然性……落着くべきところで物語が結末を迎えたという感を抱かせるところである。これはある種の幻想文学のみが到達しうるエンディングであると思う。そう言えば夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社文庫)のエンディング(ただし本当のエンディングではなく主人公たちが島を出る時点でのエンディング)とも妙に似通っているが、共通の祖形でもあるのだろうか。
あと登場人物のなかで最も嫌な奴がラストで無残な最期を遂げるのが、実にエンタテインメント小説的なカタルシスを味わわせてくれてとてもよい。同種のサスペンスでもたとえばパトリシス・ハイスミスではなかなかこうはいかない。
それにしても、このラストシーンのヒロインをどうとらえるか。これは「夏冬」のラストと同様一筋縄ではいかない問題だ。地獄巡りのなれの果てというのも一つの読み方ではあるが、ラストで文章が一気に高揚することを考えると、正解ではないような気がする。個人的にはジュスティーヌ/ジュリエット物語の一つのヴァリエーションとしてポジティブにとらえたいと思う。何がポジティブなのかよく分かりませんが、まあ要するにヒロインの今後の人生に幸あれということですな。
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- 作者: ジョン・フランクリンバーディン,John Franklin Bardin,宮下嶺夫
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2003/12
- メディア: 単行本
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「殺意のシナリオ」はアル中気味の広告代理店エグゼクティブ、フィリップ君が主人公。ある日彼がオフィスの自分の個室に入ると、覚えのない原稿が机においてある。なんとそこには今晩彼に降りかかる出来事が予言されているではないか。そしてその予言はまんまと的中することになるのだ。こちらの作品は多視点で書かれており青尾蠅にくらべれば抜群に読みやすく、ぐいぐいと物語に引き込まれていく。この「予言」はラストで合理的な説明がつくが、そこがかえってもの足らない。
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さて続いてペルシュロン……と思ったが本がどこかに行ってしまった。確かに買ったおぼえはあるのだが……