少女七竈と七人の可愛そうな大人

「白雪姫と七人の小人」のパロディみたいな表題を持つこの作品は、「辻斬りのように」の主人公川村優奈と行きずりの七人の男から「たいへん遺憾ながら、美しく生まれてしまった」娘、川村七竈十七歳の物語である。「辻斬り〜」の主人公川村優奈はもの狂い(七竈の言葉で言えば「いんらん」)の直らぬまま家をあけがちで、この連載第一回では、ついに最後まで登場しない。
七竈は男を憎み鉄道模型を愛する「鉄」愛ずる姫君である。しかしその鉄道模型好きにはどこか不吉なものがある。人は自分の好きなものを「部屋いっぱいにひろがる呪縛の細い線路。くろぐろとした、そのせかい。」などと形容するものだろうか。好きな列車の名前を「不吉な動物の鳴き声のように」繰り返すものだろうか。それはむしろオブセッション(妄執)といったほうが近いような気がする。
せりふ回しが少女漫画的で面白い(清原なつのとか夢路行とか)。しかしそういうせりふを不自然に感じさせないような地の文の文体をつくるということは誰にでもできることではない、と思う。
「辻斬り〜」で川村優奈の隣に座っていた同僚教師がまた登場して、メフィストフィレスのように思わせぶりなセリフを吐く。こいつは何か虫が好かない。殺されればいいのに、と思ったりもする。ちょっとだけ。