北沢書店全在庫50%引きセール


今朝の本棚の中の骸骨にお知らせがあったので、あわてて行ってみました。あまりじっくり見る時間はなかったのですが、拙豚が行ったときには、既にめぼしいものは買い尽くされているような感じでした(特にオカルティスム関係はアッパレなほど何も残っていない・・・orz)。でもなんとか見繕って買ったのが下の14冊。

1) M.A.Garces : Cervantes in Algiers (アルジェ捕囚時代のセルバンテスの研究)
2) The Sitwells and the Arts of the 1920s and 1930s(奇人揃いシットウェル三兄弟を巡る展覧会のカタログ)
3) Irma B. Jaffe : Shining Eyes, Cruel Fortune (ルネサンス女流詩人の研究)
4) W.H.Hodgson : The Ghost Pirates (Ash-Tree Press のペーパーバック)
5) Paul Feval : Knightshade (Sarob Press: Brian Stablefordの英訳)
6) Henry Mazzeo(ed.) : Hauntings (怪奇小説のアンソロジー、挿絵エドワード・ゴーリー)
7) Nugent Barker : Written with my Left Hand (Tartarus)
8) John Gale : A Damask of the Dead (Tartarus)
9) Gerald Heard : Dromenon (Tartarus)
10) E. Heron-Allen : The Princess Daphne (Tartarus)
11) E.F.Benson : The Face (Ash-Tree Press)
12) Mario Praz : The Hero in Eclipse (単に安かったから買った)
13) Karl Kerenyi : Athene (上に同じ)
14) Jasper Howlett : Talking of Ballet (上に同じ)

・・・こう並べてみると無駄な散財をしてしまったような気がしてたまらんなり。このうち見つけて本当に嬉しかったのは最初の二冊だけだし。でもレジのお姉さんがニッコリ笑って「8月末までやってますのでまた来てくださいね」と言ってくれたのでまた行こうと思う。今日は二階を見る時間があまりなかったことでもあるし。

ヴィクトリア朝小説におけるヒーローの凋落(マリオ・プラーツ)

いや読ませます。「安いから買った」なんて失礼なことを書いて悪かった。ディケンズの章をちょっとめくって見ただけでも、「ディケンズはサドの読みすぎで登場人物の性格が歪んだ(p.137)」とか「『エドウィン・ドルード』はマックス・エルンストのコラージュに似ている(p.139)」とか「ディケンズは鞭打ちの性的なサディスティックな意味をはっきりと理解していた(p.387注)」とか奇怪な説がてんこ盛りになっていて飽きない。そして、こういった奇説怪説が苦虫を噛み潰したような文体で淡々と叙述されているのがたまりません。「こんなことあたりまえでしょ? あんたら何面白がってるの? この世に面白いことなど何もないのだよ」みたいな。

批評家を乱暴に二種類に分類して、「本を読んだ気にさせるタイプ」と「読もうとする気にさせるタイプ」に分けると、マリオ・プラーツは明らかに前者であろう。帯の推薦文の書き手には最も向かないタイプである。というか、彼がある本を論ずると、その論考は吸血鬼の一噛みさながらに、対象となった作品を、死臭を漂わせながらも不死にするようだ。