大宇宙の危機

 これは8月23日の日記の続きです。
 
 むかしむかし、某社のバラード短編全集のどれかの巻で、スケジュールが押せ押せになって、編集部総出でようやく地球の運命が救われたことがあったそうです。

 しかし今回のボルヘスのケースはさらにすごくて、5月出版の契約にもかかわらず3月の時点で初稿ゲラさえ出ていなかったのですよ。しかもブツは2段組700ページの大冊です。地球どころか大宇宙の危機であります。

 初稿ゲラが出たのが5月の半ばでしたが、空気を読まない訳者はゲラを赤字だらけにして返すのでした。ほら、都筑道夫の長篇に『朱漆 (うるし) の壁に血がしたたる』っていうのがあるでしょう。あんな感じで赤いのです。

 その後どうなったかは詳しくは知りませんが、風の便りによれば、装丁原稿のラフを先方に送ったら大絶賛されて、おかげで期限のことはウヤムヤになったらしいです。まあなんにせよ無事に刊行できてほっとしています。もう池袋のほうには足を向けて寝られません。

 しかしあれですね、バラードといいボルヘスといい版権物の翻訳というのはせわしくていけませんね。勝手に危機にされる地球とか大宇宙もさぞかし迷惑していることでしょう。とうの昔に版権が切れたものを相手にしているほうがずっと気が楽でいいです。