さらに一日たつと

 
 さらに一日たつと、倦怠感はなくなり、熱も平熱に戻り、筋肉痛も触れば痛い程度まで和らいできた。すると現金なもので、なんとなくあと20年は生きられそうな気がしてきた。ということは、運がよければレムコレクション第二期の完結をこの目で見られるかもしれない。まことにめでたいことである。

 ところで南條竹則氏の『あくび猫』という本によれば、特に名を秘す某社では、入稿の遅い翻訳者に不幸の手紙というのを送って呪い殺しているらしい。恐ろしいではないか。
 

「過去何人も訳者を殺してるって噂だから」

 
 でもこの文明開化の世の中にまさかそんなことが。きっとフィクションに違いない、と思って、念のため某社に「あのうこんなことが書いてあるんですが……」と恐る恐る問い合わせてみたら、「あそこに書かれていることはすべて事実です」と回答が返ってきた。何ということであろう。ああそういえばあの人もこの人も、最後の訳書はここから出ていた……

 しかしおそらくは不幸の手紙を何十通も送り付けられているに違いない〇ャ〇・プ〇〇〇キー『大〇〇』とかマ〇ー・ボ〇〇〇〇『エ〇〇ー・〇ー』の訳者の方々はいまだご健在のようだ。きっと鋼鉄のような神経をお持ちなのだろう。

 まあでもSF担当スタッフは何しろSFだからサイエンスで未来であるにちがいない。呪殺なんて野蛮で前近代的なことはきっとやらないだろう。刊行が少々遅れても仕方ないのかもしれない。