数年前惜しまれながら早すぎる死を迎えた神崎繁の旧蔵書がヤフオクにどちゃっと出るという噂を聞いて及ばずながら参戦した。
当日はあんのじょう壮絶な争奪戦が繰り広げられたのだが、拙豚はあんまり目立たない一山ものに的を絞り、おかげで「51冊一括」というのと「76冊一括」というのと「38冊一括」というのを落札できた。落札価格は合計で18,588円であった。一冊あたりにすると113円くらいになる。
ほとんど福袋みたいなもので、中身が何かもろくに知らずに入札したのだが、あとで調べてみるとクルト・パウル・ヤンツのニーチェ伝三巻本が混じっていたのでちょっと嬉しかった。『ニーチェ どうして同情してはいけないのか』の冒頭近くで引用されていた本である。
おまけに引用されていた箇所に紙が挟まっていたのでますます嬉しくなった。といっても共感してくれる人はあまりいないだろうけど。
ところでこういうことを日記に書くと、「そんなに買って読む時間はあるのか」とか「本当に全部読むのか」とたずねる人がいる。これは天下の大愚問といっていい。なぜか。
なぜかというと、拙豚くらいの年寄りになると、何を読んでも、読んだとたんにたちまち忘れてしまう。だから読んでも読まなくても同じなのである。C.L.ムーア描くところのシャンブロウは「アカルイ、クライ、アタシニハオナジ」と言うが、拙豚の場合は「ヨンダ、ヨマナイ、アタシニハオナジ」なのである。
どちらも結局同じなのならば、読んだか読まないかを問うことにどれだけの意味があるだろう。言うまでもなく、まったく何の意味もない。大愚問たるゆえんである。
「読んでも読まなくても積読」これがわが座右の銘なのである。