あとになって

新しく出た訳本をパラパラとめくるたびに、粗忽な拙豚は「あーしまった」と天を仰ぐ。今回の『イヴのことを少し』もはたして例外ではなかった。

今回一番恥ずかしいのは、キャプションの訳である。'take over'というのはむろん「引き継ぐ」という意味で、こんなのは高校生さえ知っている熟語だが、それを間違えているのだから話にならない。しかも原文が挿絵の中にあるので、赤裸々に間違えていることがわかってしまう。三校までとったのに……

それから(これは間違いではないが)巻末の注で引用したヴィヨンの「疇昔の美姫の賦」。この「疇昔」はたしか「そのかみ」と読んだと記憶していた。だが手元の鈴木信太郎訳ヴィヨン全詩集を見ても、「疇昔」にはルビをふっていない。すると「ちゅうせき」と読むのか……いやそんな堅苦しい読み方をしたら雰囲気がだいなしになる……絶対「そのかみ」のはずだ……と思いまどいつつも、確たる証拠が見つからなかったので、結局「疇昔」にはルビをふらなかった。

しかし暮れも押し迫った今日、ハタと気がついた。確かめてみるとやはりそうだった! 日夏耿之介訳では疇昔が「そのかみ」になっているのだ。

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あーこれがもっと早くにわかっていたら鈴木信太郎訳ではなく日夏耿之介訳で引用してやったのに! と思っても完全に後の祭りであった。