わが創元推理文庫神7(その3)

神7の三番手はこれ↓。

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このシリーズから選ぶとすれば1巻か4巻しかありえない。残りの2、3、5巻は収録作品が少々変わっても全然アリだが、この二巻だけはそれは(順番も含めて)動かせない。仮に将来、『世界推理短篇傑作集』みたいに新版が出るとしても、この1巻と4巻だけはみだりに内容を変えないよう切にお願いしたいと思う。

それはそれとして1巻か4巻のどちらを選ぶか。これが究極の難題である。あたかも子供に向かって、「パパとママのどっちが好き?」と問うようなものだ。なんというむごたらしい質問であることか。いや今の場合は自分が自分に聞いているのだけれど。

結局「4という巻数が不吉でいい」「収録作品がこちらのほうが多いのでお買い得である」といった、理由にもならぬ理由によって4巻にした。ここには「緑色の怪物」「草叢のダイヤモンド」「罪のなかの幸福」「恋愛の科学」「仮面の孔」といった、この世のものとも思えない作品がおさめられている。

むかし読んだときは青柳パートが邪魔で邪魔で、「よりによって『列車〇八一』かよ」などと思っていた。だがその後、澁澤パートだけを収めた『仏蘭西短篇飜譯集成I』『仏蘭西短篇飜譯集成II』が立風書房から出るにおよんで少し考えが変わった。これはこれでたいへん結構なものだが、お行儀がよすぎるというか、何とかを入れぬコーヒーみたいな感じがする。青柳瑞穂の一時代前のモダニズム趣味と、ブルトンの洗礼を受けた澁澤趣味が危ういバランスでうまく溶け合っているこの4巻こそが最上のもので、ここに収録されてこそ「草叢のダイヤモンド」その他も一段の光輝を増すのだと思う。