安部公房のあんまりな決めつけ

 

 

 今を去る40年ほど前、NHK教育テレビの番組「若い広場」にマイブックコーナーというのがあった。当時高校生だった斉藤とも子を聞き手に、第一線で活躍中の作家たちが若い人に読んでもらいたい本を薦めるコーナーである。筒井康隆が失言したり、北杜夫が突如躁状態に化したりという、ハプニング性に富んだ楽しい番組だった。

 

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 なかでも安部公房の推薦する三冊というのがよかった。他の作家は(たとえば筒井康隆はフロイトの『精神分析入門』、北杜夫はトーマス・マンの『ブッデンブローク家の人々』というように)おおむね若いうちに読んでおくべき古典をあげているのに対し、安部公房の三冊はなんとこれ ↓ だ。

 

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 つまり自分が最近読んで一番面白かったものを、高校生向けとかそういった手加減なしに、ガチでぶつけてきているのだ。文学には入門も古典もない、文学は「いま・ここ」にしかないものだという姿勢が露骨に出ていて惚れるではないか。

 さらに結びのセリフ ↓ もまたよかった。あまりといえばあまりな決めつけである。文字で読んでもなかなかのインパクトだが、肉声はさらにすごかったんですよ。

 

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  ちなみにこのときのインタビューの内容は新潮社版安部公房全集の第26巻で読めます(pp.409-414)。