届いた〜文庫は〜

 
し〜ろ〜い〜縁取りが〜 ありまし〜た〜。ということで、『アンチクリストの誕生』の見本を先週受け取りました。全面漆黒のアンナ・カヴァン『氷』にさえ白い縁をつけてしまうというちくま文庫の伝統は以前健在であります。でもこの本の場合は、赤を基調にした装画になんとよくマッチしていることでしょう。

上にいる東方の三博士はいかにも性格が悪そうな面構えをしています。とくに一番左の人。
 


 
これはラフの段階では普通の顔だったのが、藤原さんが「もっと邪悪な表情にしてください」と遠藤画伯にリクエストしてこうなったのだそうです。

それにしても見事な色合いです。ディスプレイ上ではよくわからないかもしれませんが、背景に見える夜空の満天の星とか、下のほうにある蝋燭の並びとか布のはためきとか、もう溜息がでるほどですよ。あと白抜きのタイトルが構図にぴったりはまっています。カタカナの「アンチクリスト」の部分は、文字がところどころ気持ち平たくて、しかも「ク」や「ス」の左下が伸びていたりして、ちょっと珍しいフォントです。こういうフォントが実際にあるのでしょうか。それともカバーデザインの山田英春さんが加工したのでしょうか。いずれにせよこのセンスはすばらしい。このカバーのためだけにもこの本を買う価値はありましょう。

しかも今回のペルッツはレジで千円払うとおつりが来るのです。ペルッツ翻訳史上初の快挙です。いままで図書館で借りて読んでいた方もこの機会にぜひお手元に一冊を。明後日十月五日発売です。

いまどき新刊のペルッツを千円以下で買える国なんぞ、日本の他にはありません。いかに版元が超絶的な努力をはらってコストダウンに邁進しているかが察せられます。(それがよいことなのか悪いことなのかはわかりませんが)