小児十字軍

この前西崎憲さんとお会いする機会があった。西崎さんは締切に追われて大変そうだった。

その席で西崎さんはH.H.エーヴェルスのある短篇の話をしてくださった。それを聞きながらなにかひっかかるものがあったのだが、あとからふと気づいた。あれはシュオッブ「小児十字軍」の一エピソードの焼き直しじゃないか! やりやがったなエーヴェルス!

エーヴェルスにはいろいろ前科がある。種村季弘は山口昌男との対談で、彼についてこんなことを言っている。

山口 ……非常に二十世紀のカリオストロ的な小説家みたいなところがちょっとある。

種村 ちょっとありますね。文章そのものは非常につまらないですよ。通俗作家で、文体がよくない。それからほとんどホフマンのまあ焼き直しですね。 

ホフマンのみならずシュオッブにまで手を出すとは。このぶんじゃ他にも何やってるか、わかったもんじゃない。

ところで小児十字軍の話はとかく悲惨なものになりがちで、シュオッブの作品も、史実にもとづく以上それはまぬかれないのだが、ここにひとつ、ぶっとんだ結末を持つものがある。

 
この結末はすごい。皆川博子食わず嫌いのひともぜひ。シュオッブ好きのひとも、ペルッツ好きのひともぜひぜひ。