新刊時から稀覯本

怪の壺 復刻版: あやしい古典文学

怪の壺 復刻版: あやしい古典文学


先週の新刊なのに三省堂ジュンク堂ブックファーストとどこを探しても見つからない。やっと紀伊国屋書店新宿南口店で手に入った。それもそのはず、漏れ聞く噂によるとこの復刻版(実質的には増補版)は300部しか刷っていないという。まるでエディション・プヒプヒかボン書店かという部数だけれど仕方がない、なにしろそれ以上刷ると301冊目に名状しがたい怪異が現れると言うのだから。かくて本書は生まれたときから稀覯本たることを運命付けられたのであった。

内容はバラエティに富んでいて、ラヴクラフトでいえばインスマウスやダンウィッチみたいな話から、翼のある沢蟹の話、人とエイが交わってできたエイ人間の話、母乳を飲むことが大好きな爺の話、「我輩は猫である」の元ネタとなったと思しい蛇飯の話など、『ボルヘス怪奇譚集』や『澁澤龍彦コレクション』3巻、あるいは柴田宵曲『奇談異聞事典』の愛読者ならば存分に堪能できると思う。