「(笑)」

伝説によれば、発言の後ろに(笑)とつけるのは、菊池寛が「文藝春秋」誌の座談会ではじめたことだという(真偽未確認)。そもそも座談会を雑誌の売りにしたのは菊池寛なのだから、「(笑)」は座談会の隆盛とともにはじまったともいえよう。

だが仮に「(笑)」を日本ではじめて使ったのが菊池寛だったとしても、それは必ずしも「(笑)」が使われるのが日本だけであることを意味しない。事実、"Borges El Memorioso"という鼎談集には「(笑)」がやたらに出てくる。「笑う」はスペイン語で"reír”といい、三人称単数現在は" ríe"(=he laughs)、現在分詞は"riendo"(=laughing)




この本は一七八九年に放送されたラジオ放送がもとになっているそうだから、「(笑)」の多いのもそのせいかもしれない。また『夢の本』で大活躍している親しい友人ロイ・バーソロミューが加わっているのも、和気藹々とした雰囲気の理由であるだろう。