世界に羽ばたく十戒

きのう言及した「阪本英明の十戒」はなんと中国語訳もされていた。もちろん知名度ではヴァン・ダインやノックスに劣るだろうけれども、この十戒は予想した以上にインターナショナルなようだ。ちなみに中国語だとこんな風に言うらしい。(第三条はもしかして誤訳かな? これだと「犯人が十人未満であってはならない」になってしまう気がする。高校で漢文を習って以来まったく中国語とは縁がないので自信はないけれど)

  1. 小說中不得出現警察。
  2. 偵探不得使用敬語。
  3. 兇手不得少於十人。
  4. 作品中不得使用他人的詭計。
  5. 即使是自己的詭計,也不得重複使用。
  6. 詭計中不得使用繩子、線、冰、乾冰、磁鐵、鏡子、錄音機、錄影帶、對杯、鞋拔。
  7. 不可使讀者成為被害人。
  8. 作品中,「五里霧中」這個辭不得使用超過五次。
  9. 解決篇不得以犯人的自白書告終。
  10. 參考文獻中不得混雜文庫本。

 
ところで、阪本英明の十戒もそうなのだが、ボ氏の六条も、条文だけではその意図がつかみかねるものがある。たとえば第三条の「犯行手段はなるべく簡潔たるべし」は、もとの文章では"Avera economia en los medios"と書いてあって、こんな説明がついている。「結末で二人の登場人物が一人であることが判明するといった場合は、楽しめる作品になり得る。ただし変身の手段が付け髭やイタリア訛りではなく、さまざまな状況や名である限りにおいてではあるが。逆の場合、すなわち二人の人間が第三の人物に変装して、その人があちこちにいるように見せかけるのは危ない橋を渡ることになる。作者はいつでも、うっとうしいと思われることを覚悟していなければならない」

つまり一人X役はやり方次第で傑作にもなり得るけれど、逆のX人一役は失敗作になる可能性が大きいと主張しているようなのです。皆さんはこれを読んでどう思いましたか。特定の作品名が浮かんだ方もいるかもしれませんが、わたしは「ほんとうにマニアってのは洋の東西を問わず細かいところにこだわるものだな。こういう人にはあまり近寄らないほうがいいかもしれないな」と感じました。