耽美な油虫


西荻窪盛林堂書房エディション・イレーヌの本の取り扱いを開始したらし。この出版社の本がまとまって手にとれる、おそらく都内唯一の場所ではなかろうか。すでにの去年3月の日記でお知らせしたように、この版元はなかなか厳しい状況にあるらしいので、またまた「ピクとも動かなかった」とか言われることのないよう、影ながら応援している。

当日記の一押しは(これは前にも書いたけど)『るさんちまん 3号 特集デカダンス』。これは凄いぞ! かの読書魔王、第三○ァントマ氏をして「これは見ない」と言わさしめた泉涓太郎の超稀覯珠玉作『紫縮緬のもえる町』*1をはじめとして、「手紙風呂」(小山内薫)、 「螺旋道」(ジェームズ・ハネカー/生田文夫訳)、「クリノリーヌ」(ユーグ・ルベル/石原俊訳)などなど、これが読書の快感でなければなんぞや、という境地に読者をいざなう文体内容翻訳ともに粒選りの名篇が収録されている。
拙豚がこの「るさんちまん3号」を買ったところは、たしか神田古書センターの二階奥にその頃まだ存在していた大塚書店だったから、もう気の遠くなるくらいに昔の話だ。それから何十年もの月日が経ち、世紀も変わったというのに、これほどの本がいまだに完売していないというのがいやはやなんともかんとも。

*1:ほんの一瞬の登場であるが、油虫(ゴキブリ)がこれほど耽美に描かれた小説が他にあろうか!