羽化

五色沼黄緑館藍紫館多重殺人 (講談社ノベルス)

五色沼黄緑館藍紫館多重殺人 (講談社ノベルス)


「どんどんバカになってますが大丈夫でしょうか」と、奥方が心配のあまり気もそぞろで、階段から足を踏み外して大きなアザをこしらえたという『五色沼黄緑館藍紫館多重殺人』。この「大丈夫でしょうか」というのは、特に194ページのことを言ってるんでしょうね。『リトモア少年誘拐』を訳した中村保男が、作品のすばらしさのあまり、やはり階段から落ちた故事を思い起こさせます。

大丈夫もなにも、「いったいこれより先はあるのか!」という凄さです。その異形さはちょうど羽化しかかったセミみたいな感じで、殻を完全に脱いでしまうともはやアートになるしかないのでは。いやアートではなくもっと変なものか……