次々と開くもう一つの扉

 
 エディション・プヒプヒの既刊4アイテムを古書肆マルドロールさんで取り扱っていただけることになりました。

No. 作者 タイトル
2 モーリス・サンド 迷路
4 H.W.ツァーン ヴァルミュラーの館
7 パウル・シェーアバルト セルバンテス
10 グスタフ・マイリンク 標本

 
 ドイツを中心としたヨーロッパ幻想小説の精髄を選りすぐった「ビブリオテカ・プヒプヒ」を、この機会にぜひお手元に! 以下各アイテムを簡単に紹介します。
 
モーリス・サンド『迷路』
 200年以上にわたってマクティーム家の当主が住まうその城には不思議な慣わしがあった。城の当主はけして妻帯しない。だから当主が死ぬとその甥が、その甥が死ぬとまたその甥がという具合に当主が受け継がれるのだった。

 またこの家ではときどき社交パーティーが催されるのだが、女性は、男勝りの女でない限り、けして招待されない。また、招待客は、深夜に部屋の外に出てはいけないときつく申し渡される。

 そして語り手エディスの従兄弟ジェラルドが当主となる日がやってきた。ジェラルドには婚約者キティがいたのだが、ジェラルドが城に住むようになってまもなく、婚約を解消したいといってくる。キティの親代わりになっていたエディスは憤激し、ジェラルドの真意を質すべく、単身城に乗り込む。ゴシックロマンの香りが馥郁と漂う一大綺譚。
 
H・W・ツァーン『ヴァルミュラーの館』
 ビジネスマンのバーネルは、列車で偶然乗り合わせた女子学生エルナにそそのかされて、青年時代を過ごした古都に途中下車した。そしてふと入った酒場で幼馴染のノースに出会う。

 夢想癖を持つノースはエジプトを放浪していたのだが、そこの地下墓地に、故郷の新聞が落ちているのを見つけた。新聞にはヴァルミュラー邸の売家広告が載っていた。興味を惹かれたノースが故郷に舞い戻ったところを、バーネルに出くわしたのだった。

 翌日館の検分に出かけた二人を迎えたのは、恐ろしく時代遅れの服装をした侏儒だった。ドイツ怪奇小説の伝統をまざまざと見せつけつつ重厚に語られる錬金術的幽霊屋敷譚。挿絵五葉入り。
 
パウル・シェーアバルト『セルバンテス』
 ある一夕、作者シェーアバルトは鍛冶工場を訪れる。そして「三百年前のあの輝かしい時代を代表するスペイン人を呼び寄せてください」と親方に願った。親方は二十人の鍛冶屋が円形に並ばせ、大槌で地面をドンドンと叩かせた。すると地面から逆さになった金たらいが浮かび上がってきた。その金たらいをかぶっているのはドンキホーテその人ではないか! 続いてサンチョ・パンサと、あろうことかセルバンテスその人まで地中から現れた。

 この三人とシェーアバルトが巨大化したロシナンテの背に据えられた風車小屋に入ると、ロシナンテはおもむろに空に舞い上がった。いざ、日露戦争を見に行こう! というセルバンテスの号令のもと、一同は世界漫遊の旅に出かけるのであったが……

 奇想天外というも愚かなわけのわからないセルバンテスの伝記小説。シェーアバルトの小説ってこんなのばっかだからなぁまったく……。挿絵入り。
 
グスタフ・マイリンク『標本』
 初期短編集『ドイツ俗物の角笛』から4篇を紹介。