招かざる厨房よカエレ

一昨日の日記を読んで、せっかく雪の篠つくなかを来てくれたお客さんを追い返すとは、なんとひどい古書店主だと思われた方もいるかもしれない。

しかし古書店が客を追い返すというのは、それほど珍しい話ではない。かくいう拙豚も、神保町T村書店の二階に始めて足を踏み入れたときは「カエレ」と言われたものだ。原因は今もって分からない。未整理本の山をいじくり倒しても黙認してもらえるようになったのはそれから二十年近くたってからのことだ。(念のため、これは非常に嫌がられる行為なので、良い子の皆さんは決してやってはいけません。)

その店の二階で本をいじっていると、いまでもたまに「カエレ」という店主の一喝を聞くことがある。でもどういう客がそう言われるのか、どうもパターンがつかめない。たぶんその道の人ならではの職業的なカンで、「これは店に害をなす客だ」というのが分かるのだろう。そう言えば故・二階堂奥歯さんも、「ここはあんたみたいな人の来るところじゃないよ」ととある古書店で言われたと、『八本脚の蝶』に書いてあった。古書店とは元来かくも恐ろしいところなのだ。だからデコポンもけして悲観することはないと思う。