謎の委託小説

かれは口に押し込まれるモノが、いったいどこからわいてくるのか、ちっともわからなかった。いつもひたすら上をむきながら、口をあんぐり聞いて、金切り声をめいっぱいだして大騒ぎしていた。それでことたりた。ところがいつからか、開いている口にはワヤワヤする黒いカリッとするものや、つるんとしてふしのあるまるまるふとったもの、水でふやかしてやわらかくしたおいしいなにか――がなぜだか、なにひとつ押し込まれることがなくなってしまった。そこでかれは、たべものを口に押し込むやつをかたく信じきっていたので、いつもやるように口を大きくひらいて、おなかへった!おなかへった!と甘えた声でさけんでみた。でも、たべものをもってきて押し込むやつはいっこうにあらわれない。ながいこと、そのままのかつこうでじっとしていた。最初の何分かは哀願するきもちでいっぱいだった。だんだんと腹立ちまぎれになり、なおもたつと疑念と絶望的な気持ちで胸がいっぱいになっていた。どこからか、こまかな黒い点みたいなモノが飛んできて、せせら笑うような音をたててはかれの辛抱強く開けたままの口や背中やあちこちにとまってあるいた。すると足もとにこぼれたなにかの肉が乾潤びて真っ黒に固まり、筋だけになった光景が、


こういう書き出しの小説を、文学フリマの弊スペースで委託販売することになりました。不思議なことに、この小説にはタイトルがどこにも書かれてない。作者(女性)の名も、現時点では厳重な緘口令が敷かれていて、ブログではけして書いてくれるなということだ。限定50部ナンバー入り。価格千円。われと思わんものは来たれ!
ちなみにこれ↓が表紙。なかなかの雰囲気ではないか。

書き忘れましたが、スペースはI-01、エディション・プヒプヒです。