よろこびの/うたをうたう/ひだりみみのために

たまさか人形堂物語

たまさか人形堂物語

『琉璃玉の耳輪』、まだ読み終わらない。このゆるやかな展開は、とても一気に読むに適さない。物語のテンポにあわせてゆるゆる読むのが正解だと思う。それもそのはず、あとがきによると、ある媒体に二年間くらいかけて連載されたものだという。昔はこの程度の長期連載というのがそんなに珍しくなかったので、こんな感じのテンポを持つ物語もけっこうあった。そういう意味ではとても懐かしい。

読んでいるうちに気づいたが、こういう乱歩テイストは、前作『たまさか人形堂物語』のときからからすでにあった。もっとも『たまさか〜』の場合は人形愛、もっと正確にいえば人形への片思いであったけれど。この珍重すべき連作短編集についても折を見て感想を書いてみたい。

ヘルツマノフスキー=オルランド「さまよえる幽霊船上の夜会」もなめるようにして読んでいる。機械仕掛の尾びれをつけて庭の水盤で泳ぐ人(通称トリトンさん)とか、777の性と72の時制を持つ人工言語を発明した教授とかが登場してきた。これなんてロクスソルス? でもとてもソルス(=solitary)とはいえない。むしろロクス・ウルサスとかロクス・ヤカマシスか。間に合えば冬の文学フリマに出すよん。