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- 作者: 芦辺拓
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2010/04/28
- メディア: 単行本
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ついに問題の『綺想宮殺人事件』が来月刊行。つつがなく店頭に並べば、21世紀最初の10年のベスト3に優に入るであろう傑作をわれわれは手にすることができる*1。
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つい「つつがなく」と言ってしまったのは、企画がときどき幻と化すという不穏な噂を持つ東京創幻社であるからして、現物を手にするまではいま一つ安心できないからだ。篤学のポーランド学者の訳稿が机の引き出しに仕舞われたままとか、死の扉が死んだきり一向に開かないとか、バーチャルネット探偵作家おん28歳が生きていれば今年で108歳*2とか、幾多の不安材料が脳裏を去来するのはいかんともしがたい。
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拙豚は「ミステリーズ!」の連載で一足先に読んだが*3、最終回には本当にびっくらこいた! 数ある『黒死館』のパロディやオマージュの中でも質量ともに最高級のものに違いなく、これを越えるものは先ず今後も出ないだろう。『黒死館』のメインテーマの一つが現代風の装いを持って絶妙に変奏されているのには、思わずスタンディング・オベーションを贈りたくなるし、『虚無への供物』を思わせる告発が終盤を飾るのも心憎いばかりだ。アインシュタイン対ヴン・ジッターの論争がこんな形で!とか、「オヤ妙な転換があるぞ」があんな形で!とか、黒死館マニアならこの本について一日語り合っても語り飽きないだろう。
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それだけに、老婆心ながら、この本を読む前には(もし未読なら)本家『黒死館』を通読することをお勧めする。さもなければこの小説は電波文の堆積としか見えないかもしれないからだ。なにしろ本家『黒死館』に対してそういった印象を持つ人も少なくないのだから。
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