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思い出したのは「ドノゴ・トンカ」という雑誌。といっても岩佐東一郎や城左門のあれではなく、バリバリの新刊です。編集が扉野良人、郡淳一郎両氏、そしてアートディレクションが羽良多平吉氏という凄い面子で、2009年中に創刊号が出るという噂です。
創刊準備号は去年の12月に出ていて、こことかここで買えるようです。
創刊準備号の目次はこんな感じで思わず溜息がでます。
・稲垣足穂拾遺「竹林談」 解題:高橋信行
・花遊小路多留保逍遥 扉野良人
・煌めく、モダニスト・亀山巌 古多仁昴志
・管の中へ 細馬宏通
・書容設計一千一冊物語 北園克衛「白のアルバム」 羽良多平吉
・戦前の神戸の詩の同人誌のこと "牙 KIVA"について 季村敏夫
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おうそうそう、なぜこんな話になったかというと、「ドノゴ・トンカ」という言葉をはじめて知ったのが、植草本を通してだったからなのです。あの人の著作からは本当にいろいろなことを教えてもらいました。
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……そんなとき、いつでも思い出す癖がついたのは、昭和五年ころだったかしらん、堀口大学の翻訳と「プティット・イリュストラシヨン」に出た原テキストをくらべながら読んだ、ジュール・ロマンの芝居「ドノゴ・トンカ」の幕あきの情景なのだ。セーヌ河にかかったポン・ヌフのまんなかで右と左から歩いてきた二人の男がぶつかり、それからドノゴ・トンカという架空の都会の開発事業を二人してもくろみ、ひと儲けしようという計画が実現されていく。
この芝居はまたレーモン・ルーセルの「アフリカの印象」を思い出させることになるが、もう一つ忘れることができないのは……
(植草甚一「おかしな世界には、おかしな人物がいつでも登場する」)