仮面幻双曲


1444年、英国王ヘンリー六世とフランス王シャルル七世はトゥールで休戦の協定を結び、百年以上前から延々と続いてきた英仏戦争もここで一息つくことになった。休戦にともない傭兵らは解散させられたが、まだまだ元気のありあまった不満分子は暴徒と化し、ノルマンディー一帯で略奪、強姦、焼き討ちと悪行をほしいままにした。シュオブの短篇「贋顔団(les faulx-visaiges)」はそんな時代の話である。

Googleで検索したところによると、どうやら贋顔団は実在した略奪部隊らしい。身元を知られないためか仮面をかぶって悪さをするためそんな名がついたという。そういえばペルッツの『スウェーデンの騎兵』の主人公の一人も、(舞台は二百年以上あとになるが)同じような覆面略奪団の首領だった。

だがその贋顔団もついに捕らえられ、首領が拷問にかけられる。コナン・ドイルの短篇で有名になった革の漏斗が出てくる。激しい責苦を受けながらも「贋顔団」の首領は口を割らず仮面も脱がない。おお、よく見ると拷問してる人も金の仮面をかぶっているではないか。いったいどちらがどちらなのか。