おそろしいことに、「マルセル・シュオブ著」としてウェブ古書店で売られている本の何冊かはマルセル・シュオブの作品ではない。
こころみにAbebooksで検索してみると、
- Librería Javier Fernándezという古書店が、Marcel Schwobの"Moi, Juif. Livre Posthume"(私はユダヤ人 遺作)という本を$29.90で売っている。→ここ
- Chapitreという古書ネットワークの大御所が、Marcel Schwobの"Le vrai drame d'André Gide"(アンドレ・ジードの真のドラマ)という本を$37.38で売っている。→ここ
この三冊のどれもマルセル・シュオブ書誌に載っていない。なぜなら彼の作品ではないから。といっても「蠢く触手」や「ネクタイ奇譚」みたいな代作というわけではなく、あるいは「テレニー」や「フロッシー」みたいな匿名のすさびというわけでもなく、単に粗忽な、あるいは悪辣な古書店が、作者名をうっかり、あるいは故意に間違えただけだ。
しかし困ったものだね〜。素人が跋扈するウェブの世界では古書店のプロ意識もまた希薄になるのだろうか。いくら種村季弘がカモにされる愉しみを喧伝してようと、こういう奴らに一杯食わされるのはごめんです。たとえば「山田風太郎の珍しい本がある」と喜んで注文したら届いたのは山田悠介だった!みたいな目にあったらあなたはどう思いますか。