ゾナ・ゲイルのこと(2)

Romance Island

Romance Island

  • 作者:Gale, Zona
  • 1st World Library - Literary Society
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 ゾナ・ゲイルの伝記は、同郷の後輩オーガスト・ダーレス(後のデルレット伯爵)の手によって一冊の本になっている("Still Small Voice" 1940)……はずなのだが、そして確かに持っていたはずなのだが、ここ数日間の努力もむなしくついに発掘を断念。なんと『幻島ロマンス』さえどこにいったのか杳として姿を見せない。

 とりあえずトウェインの米国作家シリーズをぱらぱらめくりながらお茶を濁す。

 ゾナ・ゲイルは1874年ウィスコンシン州Portageに生まれた。姓からも想像がつくように先祖はスコット-アイリッシュ系の移民。鉄道技師の父は日曜哲学者でもあり、プラトンの『パイドロス』とスウェーデンボルクにもっとも共鳴すると幼い娘に語り聞かせていた。

 はたちそこそこでニューヨークに上京し、「ニューヨーク・イブニング・ワールド」誌に記者として雇われる。才気煥発な美貌の記者は一躍ジャーナリズムの人気者となった。世紀末の落陽の残光を身に帯びたエドガー・ソールタスやジェームズ・ハネカー、それから当時ニューヨークに滞在していたリチャード・ル・ギャリエンヌやヨネ・ノグチ(野口米次郎)と知り合うのもこのころである。

 1904年、大恋愛の破局に見舞われ故郷Portageに戻る。二年後、初の長編『幻島ロマンス』を発表。やがて政治活動にも首をつっこみ、婦人の権利拡大や、1927年にはサッコ&ヴァンゼッティ救援運動のメンバーにもなる。
母の死の前後より心霊主義に目覚めウスペンスキーに傾倒。遺稿として何百もの「亡き母の彼岸よりのメッセージ」の走り書きが残っているという。

 死の八年前(1930)に短編集"Bridal Pond"を発表。その表題作が今回『ざくろの実』に収録されている。読んでおわかりの通りとても不思議な短篇だ。この短編集についてはダーレスが面白いことを書いていたと思うのだが、それはいつか、"Still Small Voice"がひょっこりと出現したときにでも紹介します。 あと1937年にヨネ・ノグチの招きで来日したときの話とか。