『増補・日本幻想作家名鑑』を応援する

 国書刊行会から2008年5月刊行予定の(でもたぶん2009年の間違い)『増補・日本幻想作家名鑑』。対象は近代文学だけだと思ってたら、編纂作業は江戸時代に突入した模様。すごいすごい。これからどこまで時をさかのぼっていくのだろう。

 ボルヘスによれば文学史と文学作品は交換可能、数学のことばでいえば双対(dual)構造をもっている。つまりたとえばカフカのある作品が現れたとすると、それが文学作品である限り、それは同時にひとつの文学史を生み出す。とくに幻想文学みたいな神話や伝説や、はたまた集合的無意識?に依拠するところの多いジャンルはいっそう両者の見分けはつきにくくなり、ひとりの類まれなる批評眼を持つ博読家によって編まれた作品は、たとえ記述形態は作家名鑑であろうとも、ちょうど荒俣宏のある種の著作のように、それ自体が稀有な文学作品となるであろう。太古、小説は百科事典であったと高山宏も言っているではないか。石堂藍のマグナス・オーパスがつつがなく完成するよう祈りたい。