室淳介氏蔵書

 
久しぶりに早稲田進省堂に寄ったらフランスの仮綴本が無慮数百冊も積んであった。例によって値付けは放棄されていて、どれでも一冊五百円。

店主によればK.M氏(かなり前に物故された元早稲田大学教授)のお宅から出た本ということだが、何冊も「個人研究費 室淳介」とハンコを押した本が交じっているのはいかなることか。こんなときボーイズラブの人はよからぬ想像をするのだろうか。

室淳介氏についてはよく存じ上げないが、いかにもフランス文学の俊英といった響きの名だ。ここに積んである中にも面白そうな本が何冊もある。こういう人の手沢本を手元に置いておけば少しは自分のフランス語も上達するかもしれない、と思って二十冊ほど買った。
 


収穫の一部。「闘牛鑑」初版はちょっと嬉しい。アンドレ・マッソンのイラスト三枚入り

 
……しかしかっては洋書というものはもう少し大切に扱われていたのではなかろうか。それが今はこんな風に十把一絡げに、ゴミ同然に売られている。値段が安くなったのは嬉しいけれど、しかしなんということもなく心が痛む光景である。興味のある方は早稲田近くに行った折にでも覗いてみるのもいいかもしれない。もっともほとんどの本はドロドロに汚れていて、おまけに早稲田大学の判が押してある、古書店カタログでいうところのreading copyではあるけれど。