闇の復権その他

 
ヘンリー・ジェイムズ怪談集成がTartarus Pressから出た。300部限定。こんどエディション・プヒプヒから出す本は200部限定だから悔しいことに100部ほど負けている。しかし300も刷って売り切る自信なし。いつかかならず350部限定の本を出してタルタラスを打倒してやろうと心に誓う。

それはともかく北沢書店が無くなってしまうと、どんな本か気軽に確認できないのが不便だ。収録作品は'The Romance of Certain Old Clothes', 'De Grey: A Romance', 'The Last of the Valerii', 'The Ghostly Rental', 'Sir Edmund Orme', 'The Private Life', 'Owen Wingrave', 'The Altar of the Dead', 'The Friends of the Friends', 'The Turn of the Screw', 'The Real Right Thing', 'The Great Good Place', 'Maud-Evelyn', 'The Third Person', 'The Beast in the Jungle', 'The Jolly Corner', 'The Sense of The Past'(これは中絶した長編)の十七篇。
 
東京都美術館のプラド美術館展があと数日で終わるというので先日の日曜あわてて行ってきた。不覚にも胸が詰まったのは展示の終わりの方、ⅣからⅤにかけて。いわゆるスペイン継承戦争によってスペインの覇権がハプスブルク家からブルボン家に移ると、絵の主流は一挙にチャラチャラしたどうしようもないロココになってしまう。ああエルグレコのリベラのベラスケスのスルバランの黒よ今いずこ……と嘆いているところに颯爽とゴヤ登場、かくて闇はみごとに復権するのであった。もちろんこれはキュレーターの演出で、こんなプロレスみたいな筋書きはあざといといえばあざといが、やはり感動を抑えることはできない。
 
GOSICKs(2) ―ゴシックエス・夏から遠ざかる列車― (富士見ミステリー文庫)も読んだ。ヴィクトリカは最近パイプを吸わないが禁煙団体から何か言ってきたのだろうか。