ROMの心地よさ

ROMの最新号は須川猊下入魂の編集による、マイケル・イネス未訳作品特集である。下の画像ではつぶれて読めないかもしれないが、サブタイトルには"The Bizarre World of Michael Innes"とある。本書のレビューを読む限りでは、このBizarreというのは実に適切な形容詞で、「このイネスいうオッサン、いったい何考えてんねん」みたいな作品ばかり書いていた人のようだ。「ようだ」と無責任な書き方をしたのは、恥ずかしながら、イネス作品は原書はおろか翻訳された作品さえまだ一作も読み通していないからだ。「ある詩人への哀歌」「ハムレット復讐せよ」「ストップ・プレス」などことごとく途中で落ちて、みな本棚のコヤシになっている。「学長の死」などは箱から出したことさえない始末。なぜだ! それは自分でもわからない。あらすじを読む限りでは面白そうなんだが〜。

それはともかく、ROMに載るレビューは、どなたが執筆されたものでも、いわばROM調ともいうべき独特のスタイルを持っている。それが、読んでいて実に心地よいのだが、なぜ心地よいかを語るのは結構むずかしい。もちろん言いたいことを語る率直さもあるだろう。抑制されたスタイルの上品さもあるだろう。しゃれた本文レイアウトのせいでもあるだろう。でもそれだけではない。何というか、読み進めつつあらすじを語る、いわば実況中継調のスタイルにその鍵があるような気もする。