『供述の心理学』

「どうして、そんな散文的なもんか」と法水は力を罩めて云い返した。「所で、法心理学者のシュテルンに、『供述の心理学(プショロギィ・デル・アウサーゲ)』と云う著述がある。所が、その中であのブレスラウ大学の先生が、予審判事に斯う云う警語を発しているのだ――訊問中の用語に注意せよ。何故なら、優秀な智能的犯罪者と云える程の者は、即座に相手が述べる言葉のうちの、個々の単語を綜合して、一場の虚妄談を作り上げる術に巧みなればなり――と。だから、あの時僕は、その分子的な聯想と結合力とを、反対に利用しようとしたのだよ。そして、試みにレヴェズに向って、風精に関する問を発したのだ。(創元推理文庫版p.454)

「シュテルン」は正しくは「シュテール(Dr. Adolf Stöhr)」。また肩書も、この『供述の心理学』ではブレスラウ大学の法心理学者ではなくウィーン大学哲学教授(o.ö.Professor der Philosophie a. d. Wiener Universität)になっている。もしかしたらその後大学を移ったのかもしれないが……。
法水の言う「訊問中の用語に注意せよ」うんぬんは、ぱらぱらとめくってみた限りでは、この本の中に見当たらないようだ。よく読めばあるのかもしれないが、残念ながら今は読む時間がないので、とりあえず中間報告。