豪華一大付録

The Pleasures of a Futuroscope

The Pleasures of a Futuroscope

いまHippocampus Pressでダンセイニの遺作長編The Pleasures of a Futuroscopeのハードカバー版を買うと、もれなく同じ本のペーパーバック版がおまけでついてくる。ペーパーバックは読書用に、ハードカバーは保存用にどうぞということらしい(ハードカバーの方はシュリンクパックで密封されているそうだ)。
さすがにマニアックな出版社だけあって愛書家の心理がよく分かっている……のか? アメリカならいざ知らず、本を置くスペースが慢性的に不足している日本だとかえって嫌がられるのではないかな。すくなくとも拙豚なら有難迷惑である。本というものは一部しか所有していないからこそ特有のオーラを発するのであって、本棚にダブリ本があると、なんだかその本の価値が下がるような気がする。
この出版社はときどきこういう、いかにもアメリカ風な豪儀なことをする。以前ここから本の小包を受け取ったとき、注文した覚えのないエイブラハム・メリットの本が一緒に入っていて、てっきり誤送かと思ったが、実はこの種のおまけキャンペーンだったらしい。
The Pleasures of a Futuroscopeは以前一読したことがあるので、感想は折りを見て書こうと思う。これはまったくの下種の勘繰りであるが、ダンセイニには乱歩やビオイ=カサーレス(「モレルの発明」!)にも通ずる「覗き趣味」があったのではないか(ファンの人すみません)……そうでもない限りこんな淡々とした「覗き」だけで進行する物語は書けないのではないか、という印象を持った。"Pleasure"(快楽)なんて言葉をタイトルに使うのも何かダンセイニらしくないが、よっぽどScopeで覗くのがPleasureだったのだろうか(ファンの方々ふたたびすみません)
Hippocampus PressはS.T.ヨシ先生の尽力のおかげでこれからの刊行計画も面白そう。2006年には全五巻のラヴクラフトCollected Essaysがいよいよ完結する他、クラーク・アシュトン・スミス論集まで出る。正直ラヴクラフトとはいいかげん手を切りたいような気もしているが、出たら出たでやはり買ってしまいそうなヨカーン。