実際にあったダイイング・メッセージ

 
id:lovelovedogさんが「実際にダイイング・メッセージを残した人物はいるのでしょうか?」と聞いているのでちょっと考えてみた。
まずダイイングメッセージの定義について。たとえば都筑道夫は、「黄色い部屋はいかに改装されたか?」の中で「被害者が息を引き取る間際に、犯人を教えようとして、言葉・文字・図形などでメッセージを残す。だが、全部言い切れなかったり、犯人に気づかれないよう、気をつかいすぎたために、捜査官にとっても、すぐわからない謎の言葉なり、文字なり、図形なりになる」と説明している。これを簡略化して次のようにダイイング・メッセージを定義しよう。

1.誰かに殺された人が、死の直前に、犯人を教えようと何らかのメッセージを残すこと。
2.それが謎となること。

1だけでなく2を加えたのは、「○○にやられた」というような、分かりやすすぎるケースを排除するためだ。
そうすると、あのドイツ版天一坊、カスパール・ハウザーの場合などどうだろう。

謎のカスパール・ハウザー (河出文庫)

謎のカスパール・ハウザー (河出文庫)

1833年12月14日土曜日の午後、カスパール・ハウザーはおそらく誰かに呼び出され、アンスバッハのホーフガルテン(宮殿付属公園)に行った。午後3時半すぎ、心臓を刺された彼が、止宿先のマイヤー家に担ぎ込まれる。そして彼は、ママと呼んで慕うキッツィンガー夫人にこう訴えた。

「ママ、ママ、僕は死んじゃうんだ、心臓を刺されたの」
「誰に」
「ホーフガルテンにいた男、鼻下髭と顎鬚を生やしてマントを着ていた/財布をくれた/驚いて落とした、/誰かやって取ってこさせて」

財布は見つかった。しかし警察に渡される前に、一家の主人マイヤーが引ったくるようにして持ち去った。このとき何かが抜き取られた可能性があると種村季弘は推測している。それはともかく、財布の中から出てきたのは異様な鏡餅、じゃなくて鏡文字のメモであった。続きが気になる人は本を読んで確認されたし。