『トランペット赤と空の蒼』

puhipuhi2005-04-26


 『最後の審判の巨匠』の解説を書く参考用にと注文していた本が今ごろ届いた。あたかもラテン系出版社のような暢気さである。まあでも来ただけよかった。

 しかしこのCorianという出版社はなかなか奇特な版元で、その出版物はSFと幻想文学の研究書にほとんど特化している。ここから出ている「ユートピア/幻想文学 書誌的辞典」は、数年前に早川書房から出た「SF入門」(例のとり・みきの表紙絵のムック)の中でも紹介されていた。これはルーズリーフ式の、総ページ数13,000という膨大な略伝つき書誌で、今もなお追加ルーズリーフの形で増補改定が続けられているという、とんでもない本である。だが中身のほとんどはイギリス・アメリカのSF作家に関する記述で占められているので、実は見かけほどには役に立たない。昔「SF入門」の記事を見てこの辞書が欲しくなり、大枚150ユーロを払って某古書店から取り寄せたことあるが――届いたものを見て金をドブに捨てたような気持ちになった。第一21世紀になった今、こんな一万ページを超える資料を紙の本で出そうというのは時代錯誤なのではないだろうか?

 ――話がそれた。『トランペット赤と空の蒼』は、ペルッツとレルネット=ホレーニアを比較対照しながら、彼らの主題や技巧について論じた本である。「トランペット赤」とは、おなじみの『最後の審判の巨匠』に出てくる色で、空の蒼(azurblau)とはレルネット=ホレーニアの長篇『赤く塗られた夢(Ein Traum in Rot)』のヒロインの瞳の色だ。まだパラパラとしか読んでないが、『最後の審判の巨匠』と、当日記4月12日で取り上げた『「両シシリア」連隊』を探偵小説として比較した章(第六章)などがあり、面白そうだ。