梶龍雄訳レオ・ペルッツ

puhipuhi2004-11-10



右の書影は、「中学生の友二年」昭和38年1月号(小学館)の別冊付録。森英俊さんが掘り出してきたものを、石井春生さんのご好意で貸してもらった。石井さんありがとう! 原作は1918年発表の『九時から九時の間』。
訳は当然抄訳だが、途中の章を手際よく省略しつつ器用にまとめられている。文章もこなれていて読みやすい。さすがは梶龍雄だ。
しかーしこの抄訳では、最後の最後のサプライズ(太陽の描写のところ)が省略されている。たぶん中学生には難しすぎると考え故意に削ったのだろうと思う。したがって、原作で言うと最後から二番目のオチ(バイオリンケースの鍵のところ)が最終オチになって物語が終わる。そのため、O.ヘンリみたいな幕切れになってるのが可笑しい。でもこれはこれでなかなかしみじみと味わい深いです。
最後に、せっかくの機会だから、見返しの訳者の言葉を転記しておきます。

 

■ は じ め に ■

この物語の主人公、デンバは、世にも不思議な行動をする男です。
なぜそんなことをするのか?
そのなぞは、この物語の中ほどのところでわかります。
それはどんななぞであるか?
それは読んでのおたのしみに、とっておきましょう*1。しかしそのために、デンバは、絶望的なくるしみと、たたかい続けねばなりません。
スリルとサスペンスにあふれた、この物語の作者、レオ・ペルツは、オーストリアの作家です。
この作品は、世界各国のことばに訳されて、たいへんな評判になりました。
日本では、これがはじめてのほんやくです。

*1:(と梶龍雄は言ってるが、実は対向ページのイラストを見ると即座にわかってしまうのであった)