Wormwood


あたかも、日本の「幻想文学」誌がイギリスで輪廻転生を遂げたかの如き本格的な幻想文学評論誌である。誌名のWormwoodとは苦艾(にがよもぎ)のこと。その花言葉ここによると、「冗談・からかい・平和・不在・離別と恋の悲しみ」。分量は88ページと薄いが、とりあげられた作家はマイリンク、E.R.エディスン、アーネスト・ブラマ、ミュリエル・スパーク、トマス・リゴッティラムジー・キャンベル等と多岐に渡る。自国作家だけでなく、汎ヨーロッパ的な視点を持ってるのが嬉しい。
なかでもボドリアン図書館所蔵の未発表書簡などを渉猟して書かれたJonathan PreeceのE.R.エディスン論は迫力の一言。『邪龍ウロボロス』の主要設定とキャラは、エディスンが小学生のとき、あらかた完成していたらしい。ボドリアン図書館に保存されていた10才のときのノートにはジャスも吐火卿もブランドック・ダーハもラ・ファイアリーズもすでに登場しており、裏表紙には、修羅国・魔女国・小妖精国・小鬼国を含む水星の地図が描いてあるそうだ。このエピソードには思わず目頭が熱くなりました。なぜかよくわからないが。
2号以降もこのレベルを維持できるのか不安になるほどの充実ぶりであるが、本家「幻想文学」が亡き今、なんとか末長く頑張ってもらいたいものであります。