倉阪鬼一郎

戦闘的?

三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人 (講談社ノベルス)作者:倉阪 鬼一郎講談社Amazon 読書中。いま第三の犠牲者がでたところ。白鳥館と黒鳥館の正体はおぼろげに見当がついたような気がしないでもないけれど*1、なんで鳥海が自在に両館の間を出入りできるのか、ま…

変なことする人

紙の碑に泪を 上小野田警部の退屈な事件 (講談社ノベルス)作者:倉阪 鬼一郎講談社Amazon[内容にある程度触れてますので未読の人は注意!]前年末に出た『本格ミステリベスト10 2008』の新作近況会で著者はこんなことを書いている。 とりあえずメインは『紙の…

実は怖いのは苦手

すきま (角川ホラー文庫)作者:倉阪 鬼一郎角川グループパブリッシングAmazon『地獄』『ざくろの実』『ポドロ島』『デ・ラ・メア幻想短篇集』と最近あいついで出た英米古典怪奇小説を読んだあとでクラニ先生の新刊を読む――とあたかも舞台がつながっているかの…

うにゃーうにゃー

ブランク―空白に棲むもの (ミステリーYA!)作者: 倉阪鬼一郎出版社/メーカー: 理論社発売日: 2007/12/01メディア: 単行本 クリック: 6回この商品を含むブログ (22件) を見る 「どくしゃへのちょうせん」があるにゃ。 ぜんぜんわからないにゃ。 でもくやしいか…

掟破りの新刊

湘南ランナーズ・ハイ作者:倉阪 鬼一郎出版芸術社Amazonまさかクラニー先生の作品を読んで泣く日が来ようとは……○○(鳥の名)を出すのは反則ぎりぎり。ましてやツバメやスズメと見まごうばかりの下手な絵で描かれては……これは泣かざるをえないではないか。あ…

とんちき

四神金赤館銀青館不可能殺人 (講談社ノベルス)作者: 倉阪鬼一郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/07/06メディア: 新書 クリック: 11回この商品を含むブログ (36件) を見る とんちきとんちき!(謎 すごいバカミスだった。あんなにあからさまなヒントがあ…

叙述トリック大全、あるいは真相の2/3

騙し絵の館 (創元クライム・クラブ)作者:倉阪 鬼一郎東京創元社Amazon おそらく現時点での倉阪ミステリの最高峰。年末の「このミス」で何位になるか楽しみ。ありとあらゆる叙述トリックが鏤められていて、さながら叙述トリック展覧会みたいだが、それでいて…

いろいろ

ひょんなことからトーマス・オーウェンについて書くことになった。オーウェンといえば戦前から戦中にかけてのベルギー探偵小説黄金時代と切って切り離すことができない。ちょうどわれらの倉阪鬼一郎氏が折からのミステリブームに乗ってデビューしたように、…

闇よ、つどえ

ダークネス (ハヤカワ・ミステリワールド)作者:倉阪 鬼一郎早川書房Amazon 初期の異色作「ブラッド」の再来のように人が死ぬ。死ぬ。死ぬ。ばたばたと原因不明のまま死んでいく。一章に一回は殺人の場面があり、しかも今回は必ずペアとなって死ぬから、単純…

The Great Return

下町の迷宮、昭和の幻作者:倉阪 鬼一郎実業之日本社Amazon 「いやあクラニーはやはり初期作品が一番良かったねえ!」「本邦唯一の怪奇小説家はどこへ行ったのだ」などと言う人に一番読んでもらいたい短編集だ。ここには大いなる来復がある。クラニー作品系列…

倉阪論メモ(1)

汝らその総ての悪を作者: 倉阪鬼一郎出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2005/09メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (14件) を見る ページの上の文字は本来は死んでいる。 論より証拠、外国人の目で、あるいは幼児の目で眺めてみるとよ…

クラニー先生おめでとう!

(この写真はmixi:「倉阪鬼一郎&ミーコ姫」コミュの「プロジェクトもじもじ」用のものでした。mixi加入されてない方は何だか分からないと思います申し訳ありません)

吸血鬼と屍姦愛好者

汝らその総ての悪を作者: 倉阪鬼一郎出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2005/09メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (14件) を見るあるフランスの女流作家が書いた物語の中で、屍姦愛好者である主人公は次のようなことを日記に書いてい…

語感の変遷について

推理日記PART10作者: 佐野洋出版社/メーカー: 講談社発売日: 2005/09/21メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (3件) を見るついでと言ってはなんだが、問題の「知る由もなかった」発言の収録された『推理日記』の最新刊も出ている。出たのは…

このゲームの名は

泪坂 (光文社文庫)作者: 倉阪鬼一郎出版社/メーカー: 光文社発売日: 2005/09/08メディア: 文庫この商品を含むブログ (10件) を見る嫁入り直前の娘と死別した老職人の寂しい生活。気のいい隣人たち。情景の断片がジグゾーパズルのピースみたいに次々と作品の…

神によってなされなかったこと

青い館の崩壊―ブルー・ローズ殺人事件 (講談社文庫)作者: 倉阪鬼一郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2005/07メディア: 文庫 クリック: 2回この商品を含むブログ (5件) を見る (ネタバレ気味なので未読の人は以下を読まないほうがいいかもです) 講談社ノベ…

クラサカ入門篇

紫の館の幻惑 教殺人事件 講談社ノベルス作者: 倉阪鬼一郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2005/06/07メディア: 新書 クリック: 1回この商品を含むブログ (12件) を見る mixiの某コミュでネタバレしまくりで受けている作品。たしかに読み終わったあとで人と…

聖ツェツィーリエ、あるいは音楽の力(違)

冥い天使のための音楽 (ミステリー・リーグ)作者: 倉阪鬼一郎出版社/メーカー: 原書房発売日: 2005/01/01メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 「ミステリ作家」クラニーの健在を示す傑作。 おなじみのゴーストハンターと黒川のコンビはここで…

倉阪鬼一郎「十人の戒められた奇妙な人々」 ISBN:4087747093

おお、これはオスカル・パニッツァですね! 懐かしいなあ、ということでパニッツァ再読中。また後で何か書きま

倉阪鬼一郎『42.195 すべては始めから不可能だった』

「読者参加型」のマラソン・ミステリー。給水ポイントでヒントをもらいつつ、二つのマラソン競技が行われる作中の全42.195章を読者が共に走りつつ真犯人を推理するという趣向です。途中三箇所に給水ポイントが設けられていて、作者が登場し、謎解きのヒント…

『The End』/グザヴィエ・フォルヌレ ISBN:4575234885/ISBN:4772001646 ――天使について――

天使とは、もともと読んで字の如く天の使いであった。欧米の作品に天使が登場する場合、彼/彼女は大抵何らかのメッセージを携えてやってくる。しかし、その天使が日本に渡来すると、それは何か別の変なものに変貌したようである。ちょうどそれは、もともとは…

『The End』/『時間は実在するか』(その2) 

それでは、「現在なき過去」、スタンドアローンの過去とはどのように実在するのであろうか。それを見るために、まず、普通の「現在―過去」の関係を見よう。例えば拙豚が、本日12月27日現在「ああ今年のクリスマスイブも淋しい夜だったなあ」としみじみ思うと…

『The End』/『時間は実在するか』ISBN:4575234885/ISBN:4061496387

たそがれSpringPointで拙豚日記が取り上げられた。やれうれしや、というわけで、若干脇道には逸れるがマクタガートの話をもう少し続けるなり。とは言うものの『時間は実在するか』は第四章以降は読んでないし、第三章までも、なにぶん畜生のこととて、正しく…

『The End』/『リカルド・レイスの死の年』ISBN:4575234885/ISBN4882027704 ―第二の死と時間について―

『The End』に出てくる町が略奪された場所であることの痕跡は、昨日書いた「測量」の他にも、例えばその図書館の博物学的緻密さ(あの描写はハプスブルク帝国の牙城であったウィーンの自然史博物館の中を連想させる。もっともあそこにあるのは本ではなく標本…

『The End』/『城』  ISBN:4575234885/ISBN:4560047030 ―測量について―

『耳らっぱ』では、聖杯の奪回は同時に世界全体の奪回に他ならなかったが、その消息は『The End』の物語内でも同じで、「The Endなるもの」の奪回はまた世界の奪回でもある。なぜそうなるのかをこれから見ていこうと思う。 まず第一のポイントとして、奪回と…

『The End』/『耳らっぱ』(その2)  ISBN:4575234885/ISBN:4875023731

ところで、十字架上のイエスの血を受けた(あるいは最後の晩餐で使用された)とされる聖杯であるが、それは当初からそういう性格を持っていたわけではなかった。事実、聖杯を題材にした最古の作品といわれるクレチアン・ド・トロワ『ペルスヴァル』(ISBN:456…

『The End』/『耳らっぱ』 ISBN:4575234885/ISBN:4875023731 …(12/18の続き)

聖杯とは人も知るように、ゴルゴダの丘でイエスが処刑されたとき、槍で突かれたその脇腹から吹き出る血――「赤」の顕現――を受けたとされる杯である。聖杯はその後ブリテン島に渡り、アーサー王の円卓の騎士たちの探索の目標となる。しかしその探索の成功は、―…

『The End』(倉阪鬼一郎)ISBN:4575234885

演奏が終わって、まだオーケストラの残響も消えやらぬうちに盛んに拍手をするのと同じくらい、この種の傑作を読んだとたんに感想を書くのは無礼極まる行為なのかもしれない。まあしかし感興の失せぬうちにメモ程度に書き留めておきたくもあるなり。 「地球の…

『学校の事件』(倉阪鬼一郎) ISBN:4344003616

待望の「事件」シリーズ第三作である。今回の舞台は「青山県の辺境に位置する吹上盆地」にある吹上市。前二作と異なり、すべての「事件」はこの吹上市の中学や高校を巡って、新学期から春休みにいたる一年のうちに、微妙にもつれ合いながら展開する。その結…

『田舎の事件』

田舎の事件作者:倉阪鬼一郎幻冬舎Amazon なんと言うか悪性腫瘍の摘出手術をライブで見ているような感じ。身につまされすぎてとても笑うどころではない。ああ自分はこんな風にならずに今まで生きてこれてよかったなあとつくづく思う。