ボルヘス

新刊時から稀覯本

*怪の壺 復刻版: あやしい古典文学作者: 山ン本眞樹出版社/メーカー: 学研マーケティング発売日: 2014/02/04メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る* 先週の新刊なのに三省堂、ジュンク堂、ブックファーストとどこを探しても見つからない。や…

あるカーの密室作品

* ボ氏の本はいま疑問点をつぶしているところ。ある対談でボ氏はこんなことを言っている。 * それはたとえばディクスン・カーの多くの小説のように、終わりまで読むと失望するものもあります。でも読んでいるあいだはたいへん楽しんで読めるのです。あるカ…

われわれに残されたよい習し

*ラッフルズ・ホーの奇蹟 (ドイル傑作集5) (創元推理文庫)作者: コナン・ドイル,北原尚彦,西崎憲出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2011/12/21メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ (12件) を見る* 聞くところによると東京創元社…

日本で重要な作家なのか

Hell Screen Cogwheels a Fools Life作者:Akutagawa, RyunosukeMarsilio PubAmazonまだまだ続くビオイ日記。なにしろ1600ページ以上あるからねえ。 1957年8月19日(月) シルビーナが彼にアクタガワの短篇を読んできかせる。わたしの示唆によって「藪の中」…

『剣の八』

剣(つるぎ)の八 (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者:ジョン・ディクスン カー早川書房Amazon引き続きビオイの日記より 1969年8月9日(土) ボルヘスとペイロウとともに家で食事。ボルヘス「ディクスン・カーの『剣の八』を読んだ。これほど博学で創意があって繊細…

五月では遅すぎる

ゆみに町ガイドブック作者:西崎 憲河出書房新社Amazon引き続きビオイの日記より。 1969年4月6日(月) ドイツの出版社より手紙。トルハウゼンの独西辞典のような言い回し。『六つの難事件』の難事件にボルヘスとビオイの序文がほしいと書いてある。四月中に…

よくわからない冗談

ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件作者:ボルヘス,ホルヘ・ルイス,ビオイ=カサーレス,アドルフォ岩波書店Amazon 「伊沢蘭軒」は大正5年6月から大正6年9月にかけて東京日日新聞などに連載された。もちろん大多数の新聞購読者は「毎朝毎朝鷗外先生の麗文が…

P氏も南山壽

引き続きビオイ=カサーレスの日記を読んでいる。今日は1962年2月26日の記述。人の日記を紹介していると毎日の更新が実に楽でいい。 ボルヘスが合衆国から電話してきた。「……ロサンゼルスでアントニイ・バウチャーとテクニックの話をした。彼はとても生き生…

都筑道夫はやはり凄い

都筑道夫 ポケミス全解説作者:都筑 道夫フリースタイルAmazon 引き続きビオイ=カサーレスの日記を読んでいる。こんなことで冬の祭典に間に合うのだろうか。それはともかく、1953年11月18日の項にはこうある。 二人で北アメリカのまぬけな作家たちの一人につ…

推理小説なんかくそくらえだ

Asesinos De Papel (Coleccion Signos y Cultura)作者:Rivera, Jorge Bernardo,Lafforgue, JorgeEdiciones ColihueAmazon 引き続きビオイ=カサーレスの日記より引用(1961年5月28日) "Vea y Lea"のために推理小説について何ページか書く。僕たちは何年も前…

読まずに書評

Borges作者:Bioy Casares, AdolfoDestino S.A. EdicionesAmazon ボ氏推理小説書評集の増強計画はあんのじょう、病膏肓状態に突入し、ついに買ったまま一ページも読んでいなかったビオイ=カサーレスの日記(上の画像の本)にまで手を出すにいたった。これを…

プロットよりも友情が大事

ボ氏のインタビューより。インタビュアーはオスバルド・フェラーリという人。 妹のノラといっしょに、シャーロック・ホームズの物語を再読したことがあります。それはまるで過去に帰ったようなものでした。というのも、もう何年も前、世界のあちこちで二人で…

マニアが最も恐ろしくなるとき

ボルヘス伝作者:ジェイムズ ウッダル白水社Amazon マニアが最も恐ろしくなるときはいつか。いうまでもない、論争をするときだ。ボ氏の場合も例外ではない。相手は当時ブエノスアイレスにいたロジェ・カイヨワ。彼は当時弱冠二十九歳の新進社会学者で、対する…

人みな戒律を負う

古くはヴァン・ダインやノックスの時代から、新しくは阪本英明にいたるまで、何人ものミステリ作家が戒律を定めてきた。批評家ならいざしらず、なぜ実作者が、このような自分で自分を縛るようなことをするのだろう。ミステリ作家というのは一種の変態性を有…

新版ボ氏書評集に向けて

というわけで、ボ氏書評集の改訂版に着手。冬の祭典までに完成させることを目標としたい。できれば印刷所で印刷したいが、間に合わなければ徹夜で手製本を作成でもやむをえない。さいわいにして祭典の翌日は休みだから、少々無理をしてもなんとかなるだろう…

ボ氏

* 誰だったかの小説で、ボードレールのことを「ボ氏」と書いてあったのを見たことがある。「君は、ボオドレエルを掴むつもりで、ボ氏の作品中の人物を、両眼充血させて追いかけていたようだ。」……こんな文章をいまでも覚えているのは恥以外の何ものでもない…

『冠詞』の復刻によせて

冠詞 復刻版 第1巻 定冠詞篇作者:関口 存男三修社Amazon「ドイツ語の神様」関口存男の天下の奇書『冠詞』が復刻された。彼の著書の中でおそらく唯一読んでいない本だ。なにしろ天下の奇書であるからして一冊五万円は決して高くはない。ただ自分に残された時…

人騒がせな本国版EQMM

*ミステリマガジン 2009年 01月号 [雑誌]出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2008/11/25メディア: 雑誌購入: 1人 クリック: 1回この商品を含むブログ (6件) を見る* 届いたばかりのミステリマガジンをめくっているうちに、うおっと驚いて椅子から立ち上がっ…

持込厳禁の書

"Borges, Obras Resenas Y Traducciones Ineditas"という本は、いままで単行本化されていなかったボルヘスの短文を集めていて、その中にシュオブの翻訳が二篇入っている。(『架空の伝記』所収の「セプティマ」と「バーク・ヘアー両氏」) こんな断簡零墨ま…

死とコンパス

自殺論作者:ジョン ダン英宝社Amazonランプリディウスの伝えるところによれば、幼帝ヘリオガバルスはシリアの僧侶たちから「汝ビアタナトス(自害/自滅者)となるべし」と告げられたという。これを聞いたヘリオガバルスは深紅(インペリアル・パープル)と金…

裏切り者と英雄のテーマ

ボルヘスと不死のオランウータン (扶桑社ミステリー ウ 31-1)作者:ルイス・フェルナンド・ヴェリッシモ発売日: 2008/06/28メディア: 文庫(注意!:作品の内容にある程度触れています)この作品と『ウロボロスの純正音律』とは共通点が二つある。ミステリの…

マラルメの二行

ボルヘスの「神曲」講義 (ボルヘス・コレクション)作者:ホルヘ・ルイス ボルヘス国書刊行会Amazon 『青年のための読書クラブ』オマージュのネタ探しに『ボルヘスの「神曲」講義』をめくっていると、こんな文章に不意打ちにでくわした。 元同編集部の佐々木絢…

マンアライヴとボルヘス

論議 (ボルヘス・コレクション)作者:ホルヘ・ルイス ボルヘス国書刊行会Amazon おおそうそう。ボルヘスといえばもう一つ思い出したことがことがある。チェスタトン『マンアライヴ』の解説者は、ボルヘスが『マンアライヴ』を評価していたことを例証するのに…

サムワンをもとめて

青年のための読書クラブ作者: 桜庭一樹出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/06メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 86回この商品を含むブログ (254件) を見る ダンテが地獄・煉獄・天国からなる一大架空伽藍をつくりげたのは、もとはといえば二十四歳で亡…

アルゼンチンの人は勤勉だ

正月までに来ればいいなあと言っていた本がもう来た! 疑ってすまなかった。アルゼンチンの人は私の十倍は勤勉だった。なにしろこんな1680ページもある本をつくりあげるくらいだから。 このぶっとい本は、1931年から1989年に至るビオイの日記二万ページから…

ビオイ×ボルヘス

一時期沈滞していたボルヘス関係出版だが、先月末久しぶりにワクワクする本が出たよ。Borges作者:Bioy Casares, AdolfoDestinoAmazonこれはどんな本かというと――ここに紹介文がある。しかしスペイン語はもうすっかり忘れてしまったので、何が書いてあるのか…

鏡と父性は怖ろしい。それから蓮画像も。

大掃除はまだ終わらない。マリオ・プラーツがスペイン旅行記の中でこんなことを書いていた。舞台はアルハンブラ。ハンス・ハインツ・エーヴェルスがポーのグロテスクについて瞑想に耽ったのと同じ場所である*1。 (アルハンブラの)世界が込み入っているのは…

すたすた、その他

トランス=アトランティック読了。面白かった。翻訳が素晴らしい! すたすた。すたすた。恥ずかしながらゴンブロヴィッチの本で最後まで読んだのはこれ一冊きりである。「コスモス」の難解さに根をあげて以来、拙豚にとってゴンブロヴィッチは鬼門になってい…

暗い広場の上で(ヒュー・ウォルポール)  ISBN:4150017565

これは「三人の詐欺師」や「新アラビア夜話」と同じく魔都ロンドンの物語である。 ……たとえばパリはね、あすこはある程度の研究をつめば、ひととおりの知識をつかめるようになれるが、ロンドンというところは、これは常に神秘だよ。かりに君がパリに行けば『…

『この私、クラウディウス』

急逝された多田智満子氏の最後の訳業、ローマ帝国第四代皇帝クラウディウスがおのれの一生を語る、という体裁の歴史小説なり。しかれど血湧き肉踊る歴史小説を期待せし者は肩透かしをくらうならん。小説らしき作為はまるでなし。時に異常なる出来事を描写し…