2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

名連載の有益性

これは前にも書いたかもしれないけれど、連載小説をリアルタイムで読んでいく楽しさはまた格別である。というのは、次の号が出るまで、これからストーリーがどう展開していくかをノンビリ考える時間があるから。たとえばほら、「読者への挑戦」がある推理小…

『名探偵の有害性』

桜庭一樹さんが『紙魚の手帖』の4月号から『名探偵の有害性』の連載をはじめた。これがめっぽう面白い。名探偵の有害性とは何ぞや。もちろん中にはメルカトル鮎みたいに、有害といってもいい名探偵はいるけれど……舞台はパラレルワールド風の現代日本。この…

ショートショート・カーニヴァル

新紀元社から牧原勝志氏編纂による『幻想と怪奇 ショートショート・カーニヴァル』をいただいた。どうもありがとうございます。一読して驚くのはオリジナル・アンソロジーとしては尋常でない質の高さだ。ベテラン勢が健在を見せつけるいっぽう、中堅や若手も…

デ・ラ・メアの目

デ・ラ・メアの『トランペット』を訳者の和爾桃子さんからいただいた。どうもありがとうございます。マラルメの「メ」はマナコなり、と誰かが言ったそうだが、デ・ラ・メアもやはり目の人である。その小説にはストーリーを統御しようとする作者の手があまり…

高原英理『精霊の語彙』

高原英理さんの短篇ひとつだけを収めた小冊子を作者の好意により落掌した。なんたる僥倖。この「精霊の語彙」は来月末に出る連作長篇『祝福』の中の一篇なのだそうだ。『祝福』というとなんだかめでたい感じがするが、本のカバー上部に下半分だけ見える漢字…

平井と小林信彦

(これは昨日の日記の続きです)こういう、フランス料理を箸で食べるような感じにときどきなる平井の翻訳態度が、ある種の人たちをいらだたせるのは当然といえば当然だろう。「ある種の人たち」というのは、大ざっぱにいうと海外の文化にあこがれる人たちで…

日夏と平井

『迷いの谷』が出た。さいわい好評のようでうれしい。漏れ聞く噂によれば今度の『ジャーロ』でも取りあげられるという。そこでこの機会に解説で書き漏らしたことをひとつふたつ。平井呈一と日夏耿之介はどちらもゴシック・ロマンス移入の功労者で、また超自…