2010-01-01から1年間の記事一覧

痛茶とともに2(黒死館の巻)

日本探偵小説全集〈6〉小栗虫太郎集 (創元推理文庫)作者:小栗 虫太郎東京創元社Amazon 粗製濫造の新書集団に埋もれながらも、クセジュ文庫はいまだに本屋の一角を固守している。頼もしいではないか。ペンギンブックス(青版)を範とした岩波新書を遠い先祖と…

痛茶とともに1(綺想宮の巻)

綺想宮殺人事件作者:芦辺 拓東京創元社Amazon今年もコミケの季節になった。さいわい気温もそれほど高くない。そこでいそいそとりんかい線に乗り込み、痛茶とともにCRITICAと黒死館逍遥との最新号を買ってきた。拙豚にとって大枚1500円を払ってCRITICAを購入…

ある『アムネジア』論をめぐって4

*アムネジア作者: 稲生平太郎出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2006/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 8回この商品を含むブログ (40件) を見る* 『アムネジア』はまだ見つからない。もう探すのも億劫になってきた。本を探しているとだんだんと部屋…

ある『アムネジア』論をめぐって3

*アムネジア作者: 稲生平太郎出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2006/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 8回この商品を含むブログ (40件) を見る* 『アムネジア』はまだ見つからない。ひきつづき現物を見ずに話を続けることをお許し願いたい。 * ア…

ある『アムネジア』論をめぐって2

アムネジア作者:稲生 平太郎メディア: 単行本『アムネジア』はまだ見つからない。不本意ながら再読せぬまま続けねばならない。 この小説には一つのシンボルが登場する。それはまず縦の線がさっと引かれ。そこに横の線が三本交わった形をしている。はやくいえ…

特別な長所

文学フリマって何か特別な長所あるのかな。 * 文章系同人がサークル参加する場合、長所はたくさんあります。 当選率が高い。(場所が蒲田になってからは今のところ抽選なし) 参加費が安い。(7,500円対4,000円) 環境が優しい。(酷暑酷寒怪臭肉壁と無縁。…

ある『アムネジア』論をめぐって1

*論理の蜘蛛の巣の中で作者: 巽昌章出版社/メーカー: 講談社発売日: 2006/10/13メディア: 単行本 クリック: 9回この商品を含むブログ (24件) を見る* 昨日触れた石堂藍さんの『アムネジア』論はたいへんな力作であって、通り一遍の読み方しかしなかった拙…

あなたはそれを……

* 石堂藍さんの『アムネジア』論 「あなたはそれを探してはならない」 が公開された。あの稀有の書に対するたぶんいまのところ唯一の論であろう。密度の濃い文章はゆっくり腰を据えて読むことを要請している。しかしその前に『アムネジア』を再読せねばと思…

「ポエティック・クラッシュ」

*文学界 2010年 09月号 [雑誌]出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2010/08/07メディア: 雑誌 クリック: 4回この商品を含むブログ (3件) を見る* 文学界九月号に「ポエティック・クラッシュ」という巧緻な短篇が載っている。沢渡と漣という二人の詩人による…

『搖籃』

* 先日日記で書いた一万円の矢野目源一『搖籃』が売れたようだ。「日本の古本屋」で検索したらいつのまにか在庫から消えていた。二千円で買えるものに一万円出すとは奇特な方もおるもんじゃのう婆さんや。 それともまだ在庫があることを世間の人は知らない…

メタモルフォーズの秘技

*音迷宮作者: 石神茉莉出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/07/29メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (5件) を見る* 一読して驚いた。もしかしたら前代未聞の書かもしれない。 たとえばジャズにはスタンダードナンバーというものがある…

柘榴の園にて

*世界魔法大全3 柘榴の園作者: イスラエル・リガルディー,片山章久出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 2002/02/20メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 4回この商品を含むブログ (1件) を見る* 日本のイズラエル・リガルディーと呼ばれたこともある黒衣…

薔薇ととらんぷ

*薔薇の家、晩夏の夢 (創元クライム・クラブ)作者: 倉阪鬼一郎出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2010/06/24メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (6件) を見る* 薔薇の咲きほこるその丘には二軒の邸宅が建っていた。上の方に住んでいる…

Saiに出会えざるの記

* [Sai]第3号が満を持し上木されたりとの噂あり。やれうれしや。RH嬢はあいもかわらず大暴れに暴れているかしらんと期待に胸を轟かせつつ神保町は東京堂ふくろう店をおとなえども、これはしたり、博捜に博捜を重ねど[Sai]は影もかたちもなし。店員の方を…

文学フリマ御礼

* * 昨日の文学フリマは雨のなかにもかかわらず大勢の方にいらしていただけました。どうもありがとうございます。 初版50部番号入りのはずが根性がなくて36部しか作れなかった新刊「クワエウィース?」はおかげさまで完売しました。(最後の1冊は表紙がシ…

アンソリットにはじまる

*完全版 突飛なるものの歴史作者: ロミ,高遠弘美出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2010/04メディア: 単行本 クリック: 20回この商品を含むブログ (9件) を見る* 本書は先に作品社から出た『突飛なるものの歴史』の完訳版である。抄訳特有の(内田百けん流に…

『綺想宮殺人事件』の記事はこちらにあります。

昭和崩御

* 失踪入門 人生はやりなおせる!作者: 吾妻ひでお,中塚圭骸出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2010/03/27メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 3人 クリック: 71回この商品を含むブログ (15件) を見る* 吾妻ひでおインタビューという体裁になっているが…

恐怖のアマゾン

* Curiosity and Wonder from the Renaissance to the Enlightenment作者: R.J.W. Evans,Alexander Marr出版社/メーカー: Routledge発売日: 2006/10/03メディア: ハードカバーこの商品を含むブログ (1件) を見る* アマゾンといえば、拙豚の世代だと、連想…

Like a bridge over troubling water

*マルチリンガルの外国語学習法 (扶桑社新書)作者: 石井啓一郎出版社/メーカー: 扶桑社発売日: 2010/03/30メディア: 新書購入: 2人 クリック: 29回この商品を含むブログ (9件) を見る* 優れた本は、どんなジャンルであれ優れた本である限りにおいて幻想文…

怪談実話

* 今宵、さる会合にて黒衣の人がこんな話を語ってくれた。 七十年代半ばのこと、都会を離れたあるところで本が一冊、人目をはばかるように出版された。部数はわずかに**部。装訂は鮮血をおもわせる真紅で、どういうわけだか天も赤く塗ってある。 それだけ…

失われたアルゴノオト

フランシス・イェイツとヘルメス的伝統作者:マージョリー・G・ジョーンズ作品社Amazon 原著を出したIbis Pressはこーんな本をメインで出版しているところである。そのことだけをもってあれこれ言うつもりはないが、もう少し、何というか、普通の版元を選べな…

存在しないものよ、御身が讃えられますように

私の書かなかった本作者:ジョージ・スタイナーみすず書房Amazon『私の書かなかった本』という題から、捨てられたアイデアやメモが雑然とまとめられた書物が連想されるかもかもしれない。たとえば星新一の『気まぐれ博物館』のような。だがそれは間違いだ。『…

プロメテウスか虐げられた人民か

「悪魔学」入門 ―「デビルマン」を解剖する―作者:南條 竹則,永井 豪とダイナミックプロ講談社Amazon なんでふ師こと南條竹則氏の新刊は2004年に出た悪魔聖誕―デビルマンの悪魔学のリニューアル版である。「南條竹則とデーモン一族」名義になっていた『悪魔聖…

魔術なき魔術

綺想の帝国―ルドルフ二世をめぐる美術と科学工作舎Amazon プラハのルドルフ宮には16世紀から17世紀にかけてのヨーロッパの精神史的展開が集約されている。その点でこの『綺想の帝国』は、エヴァンスの『魔術の帝国』と見解を同じくしている。しかしこの本に…

金曜日ラビは拝謁を賜った

魔術の帝国―ルドルフ二世とその世界〈上〉 (ちくま学芸文庫)作者:ロバート・J.W. エヴァンズ筑摩書房Amazon アマゾンで見たら元版(1988)はおろか文庫版(2006)さえ品切。今の文庫は3年くらいしか寿命がないのか。それはともかく、この『魔術の帝国』はルドル…

木曜日ラビは魚臭を嗅いだ

Magic Prague作者:Ripellino, Angelo MariaPicadorAmazon 「人生のたそがれをかの地で過ごすことを望んでもよかったはずだ。でもプリツバテスキのように、あるいはリリエンクローンのように夢は萎れた。樹木さながらに根付いていたはずのあの地と僕とのつな…

水曜日ラビは迷夢を解いた

*The Follies of Science at the Court of Rudolph II: 1576-1612作者: Henry Carrington Bolton出版社/メーカー: Nabu Press発売日: 2010/01/02メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログ (1件) を見る* ある冬の夜、炉端で物思いにふけるラビ・レー…

火曜日ラビは偽書を出した

*The Golem and the Wondrous Deeds of the Maharal of Prague作者: Yudl Rosenberg,Curt Leviant出版社/メーカー: Yale University Press発売日: 2008/08/19メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログ (1件) を見る* 20世紀のはじめ、コナン・ドイル…

月曜日ラビは太陽を止めた

*Yiddish Civilisation: The Rise and Fall of a Forgotten Nation (Vintage)作者: Paul Kriwaczek出版社/メーカー: Vintage発売日: 2006/10/31メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログ (1件) を見る* ラビ・レーウ(1513−1609)はルドルフ2世(1552…