2008-01-01から1年間の記事一覧

『奇談異聞辞典』読破作戦

* 奇談異聞辞典 (ちくま学芸文庫)作者: 柴田宵曲出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2008/09/10メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 23回この商品を含むブログ (18件) を見る* 発売一週間にしてたちまち重版という驚異の『奇談異聞辞典』。昨日までに「黄金…

死とコンパス

自殺論作者:ジョン ダン英宝社Amazonランプリディウスの伝えるところによれば、幼帝ヘリオガバルスはシリアの僧侶たちから「汝ビアタナトス(自害/自滅者)となるべし」と告げられたという。これを聞いたヘリオガバルスは深紅(インペリアル・パープル)と金…

顔のない死体後日談

歴史〈上〉 (ワイド版岩波文庫)作者:ヘロドトス岩波書店Amazon ヘロドトス『歴史』第二巻にあるエジプト王ランプシニトスと盗賊の物語は、乱歩によほど感銘を与えたのだろう。世界最古の「顔のない死体」トリックとして、『江戸川乱歩全集 第27巻 続・幻影城…

栄地四囲

パリ点描 (講談社学術文庫)作者:ジャネット フラナー講談社Amazon ジャネット・フラナー(1892-1978)は生涯のほとんどをパリですごしたアメリカ人の作家。『ニューヨーカー』誌のパリ在住特派員として、1925年から1939年にかけて文壇・画壇・劇壇その他もろ…

ビアタナトス

自殺論作者: ジョンダン,E.W.サリヴァン,John Donne,Ernest W.,2 Sullivan,吉田幸子,久野幸子,岡村眞紀子,齊藤美和出版社/メーカー: 英宝社発売日: 2008/08/01メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (6件) を見る* くわしくはここを見てくだ…

グレー・グレー

文学界 2008年 10月号 [雑誌]Amazon ゴセシケがトラウマになってますという話はSF系サイトをたどればあちこちで目にするが、ほんとうにあの小説はすごかった。県立図書館で立ち読みをはじめたら止められなくなり、おしまいまで読みきってボッーっとなって家…

誰にも似ないように

シプリアン・ダナルクは他人と同じであることに我慢ならぬ男だった。いっとき美術に凝ったこともあった。いかなる流派にも属さぬ、誰も評価したことがない絵を愛した。だがそういう作品もいずれは人の知るところとなる。次にシプリアンは詩作に耽った。誰も…

仮面幻双曲

仮面幻双曲 (小学館ミステリー21)作者:大山 誠一郎小学館Amazon 1444年、英国王ヘンリー六世とフランス王シャルル七世はトゥールで休戦の協定を結び、百年以上前から延々と続いてきた英仏戦争もここで一息つくことになった。休戦にともない傭兵らは解散させ…

Come in Number 51,Your Time is Up

砂丘アーティスト:サントラ,ピンク・フロイド,カレイドスコープ,パティ・ペイジ,ヤング・ブラッズ,ロスコー・オルコムEMIミュージック・ジャパンAmazon 短篇集『黄金仮面の王』に入っている「オルフィラ52と53」は、老人専用の病院、作中の表現でいえば「生…

新しい宇宙論

*フェヒナー博士の死後の世界は実在します作者: グスタフフェヒナー,服部千佳子出版社/メーカー: 成甲書房発売日: 2008/09/02メディア: ハードカバー購入: 1人 クリック: 1回この商品を含むブログ (10件) を見る* 袋小路に陥り沈滞の極にあった未来派運動…

変なことする人

紙の碑に泪を 上小野田警部の退屈な事件 (講談社ノベルス)作者:倉阪 鬼一郎講談社Amazon[内容にある程度触れてますので未読の人は注意!]前年末に出た『本格ミステリベスト10 2008』の新作近況会で著者はこんなことを書いている。 とりあえずメインは『紙の…

タラフマラは勤勉だ。

帰宅すると郵便局の不在配達票がポストに。なんでもスペインから小包が来たらしい。スペインからというと思い当たるのは8/28の日記に書いたタラフマラ書店しかない。おっすごい。ふだんはペヨーテ三昧でも仕事には手を抜いてませんね。これからは大いにひい…

贋のマルセル

おそろしいことに、「マルセル・シュオブ著」としてウェブ古書店で売られている本の何冊かはマルセル・シュオブの作品ではない。こころみにAbebooksで検索してみると、 Librairie Reignierという古書店が、Marcel Schwobの"Profondeurs de l'Espagne"(スペイ…

お下劣ばんざい

カニバリストの告白がいまアマゾンで347位。何があったんだろう。超有力な書評でもでたのか、それとも佐川君みたいな人がまたあらわれたのか。いずれにせよマドセンのような作家が広く読まれるのはよろこばしいことだ。お下劣ばんざい。オルゴール付きおまる…

驚異の翻訳

*グーグルによるシュオブの短篇"L'homme double"の自動翻訳。 * す、すごい迫力ですね。ですます調がいい味を出してます。どなたかの訳された『エブドメロス』や『狂気の愛』をちょっと連想させはしますが、こんな訳しかたは正気の人にはとうてい無理でし…

最近もっとも驚いたニュース

「ナポレオン的面貌」の正体が明らかに! おそろしやブック検索。こういう強力なライバルを目にすると、エディション・プヒプヒも負けておられぬと改めて奮起してしまいます。

マルセル・シュオブ補完計画4 恐怖のグーグルの巻

* 目下ストリートビューで物議をかもしているグーグルだが、ほかにブック検索という嬉しいサービスもあって、これを使えばウェブを検索するのと同じ感覚で本の中身を検索できる。惜しむらくはすべての本が対象になっているわけではなく、版元から許可を受け…

マルセル・シュオブ補完計画3 タラフマラ書店の巻

アルトー後期集成 3作者:アントナン・アルトー発売日: 2007/06/20メディア: 単行本『架空の伝記』に収録されなかった架空伝記もの「デミウルゴスのモルフィエル」と最晩年の短篇「ユートピアの対話」を翻訳してみたいと思う。しかし語学力の貧しさはいかんと…

マルセル・シュオブ補完計画2 黙示録の獣の巻

DO WHAT THOU WILT P作者:Sutin, LawrenceSt. Martins Press-3PLAmazon 一部ではものすごく評価の高いアレスター・クロウリー。しかしいったいどこがいいのか、いまひとつよく分からない。それはともかく、そのクロウリーがパリに滞在中のおり、一夕彫刻家ロ…

フロイト的に見たレム

Art And Science of Stanislaw LemMcGill Queens UnivAmazon レムと言えば女嫌い、女嫌いと言えばレムというくらいにその女嫌いぶりは有名で、彼の作品中に女性はめったに出てこない。たまに出てきてもどこぞの海が作った合成物だったりする。去年翻訳が出た…

このハルヒ声はなんだ!

ドイツ語版ハルヒ、ちゃんとYouTubeにあった。いわゆるアニメ声じゃないのがすごい違和感。このハルヒの声は絶望あるのみですね。みくるは許そうと思えば許せる、唯一合格なのは長門だけ。というかなぜ肝心の古泉君はでてこないのか? ドイツの人の趣味じゃ…

Die Melancholie der Haruhi Suzumiya

* レム三周忌本としてまた何かアンソロジーを組もうと思ったけれど、あれやこれやで絶対的に時間が不足。結局、二年前に訳しかけたものの『発狂した仕立屋』には入れなかったインタビューを薄い本にしてお茶をにごすことになってしまった。これは、旧知のフ…

いろいろ

最近やけに「カニバリストの告白」で検索して来る人が多いと思ったら、どうやらどこかの書評教室の課題図書になっているらしい。なかにはこんな検索語で来る人もいる。この人は書評家として大成するような気がした。だって目のつけどころがいいじゃないです…

L氏書簡集

Der Widerstand der Materie: Ausgewaehlte BriefeAmazon10月に出るらしい。文フリに間に合うかな?

ポドロ島初版完売?

*ポドロ島 (KAWADE MYSTERY)作者: レズリー・ポールズハートリー,L.P. Hartley,今本渉出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2008/06メディア: 単行本 クリック: 29回この商品を含むブログ (25件) を見る* 現在アマゾンで購入不能。すごい売れ行きですね。…

裏切り者と英雄のテーマ

ボルヘスと不死のオランウータン (扶桑社ミステリー ウ 31-1)作者:ルイス・フェルナンド・ヴェリッシモ発売日: 2008/06/28メディア: 文庫(注意!:作品の内容にある程度触れています)この作品と『ウロボロスの純正音律』とは共通点が二つある。ミステリの…

優雅な下品

カニバリストの告白作者:デヴィッド・マドセン角川グループパブリッシングAmazon サドの小説とサドの書簡のあいだには少しばかりへだたりがある。――凄惨と退屈とがまだらに混じる小説は通読が苦痛だが、書簡は読んでたのしい。なぜならそこには彼の小説に乏…

実は怖いのは苦手

すきま (角川ホラー文庫)作者:倉阪 鬼一郎角川グループパブリッシングAmazon『地獄』『ざくろの実』『ポドロ島』『デ・ラ・メア幻想短篇集』と最近あいついで出た英米古典怪奇小説を読んだあとでクラニ先生の新刊を読む――とあたかも舞台がつながっているかの…

フリードリヒ・グラウザーI世閣下(1): 旅のはじまり旅のおわり

老魔法使い―種村季弘遺稿翻訳集作者:フリードリヒ グラウザー国書刊行会Amazon池田香代子氏は解説で、なぜ種村季弘は晩年にあれだけグラウザーの翻訳に入れ込んだのだろうと問うている。言外には「グラウザーみたいな大したこともない作家に」というニュアン…

LPHの耽美な生活(2) 白鳥虐殺者の巻

ポドロ島 (KAWADE MYSTERY)作者:レズリー・ポールズ ハートリー河出書房新社Amazon 「ポドロ島」には理由らしい理由もなく動物を殺す人が出てくるが、その登場人物に似た行動をとるハートリー自身のエピソードがフランシス・キングの回想記に出てくる。 他の…