- 作者: SFマガジン編集部
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2019/02/08
- メディア: ムック
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『SFが読みたい!』の各社刊行予定を見ていると面白そうな企画が目白押しである。すっかりレギュラーメンバーになった『SFの気恥ずかしさ』や『無頼の月』などに加えて、新しく『危険なヴィジョン 完全版』とか『伊藤典夫評論集成』とか、あっと驚くタイトルが新規登場した。伊藤典夫の執筆するSFスキャナーの洋書紹介は本物より面白いと評判だったので、まとめて読んだらさぞ至福の時が過ごせるだろうと思う。そればかりではない。この評論集成には筒井康隆編集長時代に『面白半分』に載った翻訳も収録されるという。伊藤訳の「映画刑事」や「ライ病棟の感染者」をまた読めるとは!
しかしいつも思うのだが、こういう年寄り向けの企画(たぶん)を立てるときは、年寄りの余命のことも考えてほしい。SFの人は人間は永遠に生きると思っているので困る。あるいはイアン・ワトソンの名短篇に「超低速時間移行機」なるものがあるが、某社屋の三階にはそんなのが置いてあるような気がしないでもない。さてこの伊藤典夫評論集成なるものは、わたしの生きているうちに出るであろうか。
それから『みすず』の読者アンケートの沼野充義先生のところを見ると、新スタニスワフ・レム・コレクションの予定があるらしい。なんでもレム自身が封印したという噂のある初期作品も収録されるかもしれないという。とても楽しみである。
しかし沼野先生の企画というだけで前途にモヤモヤした暗雲がたちこめるのはいかんともしがたい。なんとかわしの生きとるうちに全巻完結すればいいのう婆さんや。いやそんな贅沢は言いますまい。わたしの生きているあいだに最初の一巻が出れば望外の喜びであります。
……あんまり言ってるとわたしの本も出してもらえなくなりそうなのでこの辺にしときます。……単に出してもらえないだけならまだいい。『SFが読みたい!』に10年続けて予告が載ったあげくフェイドアウトするという、リラダンの「希望による拷問」みたいな刑が待っていないともかぎらない。K会の人がここを見てないことを祈る。